楽天の太田光捕手が、今オフに取得した国内FA権を行使する決断を固めたと報じられました。ドラフト会議前日の21日までに球団側へ権利行使の意向を伝えていたとされ、この動きが楽天フロントをドラフト1位での渡部捕手指名へと舵を切らせた決定打だったことは間違いありません。正捕手クラスが市場に出るとなれば、捕手陣のテコ入れを目指す阪神をはじめ、複数球団による争奪戦へと発展するのは確実な情勢です。 しかし、このニュースを聞いて「カープこそ本気で獲得に名乗りを上げるべきではないか」と感じたファンは私だけではないはずです。 太田捕手の獲得を推す最大の理由の一つが、広島という土地やチームとの極めて深い結びつきです。岡山県倉敷市出身の太田捕手は、高校時代を広陵高校で過ごし、その後は大阪商業大学へ進学しました。広陵・大商大といえば、いずれもカープのスカウティングにおける最重要パイプラインです。環境への適応に不安はなく、地元ファンからの支持や受け入れ態勢という意味でも、これほど合致するタレントは市場に滅多に出てきません。 何より、現在のカープの捕手の選手層を見渡したとき、太田捕手はまさに喉から手が出るほど欲しいピースです。扇の要であるべき坂倉は、リードや守備面の課題から捕手失格の烙印を押されて内野起用が続き、その上このオフはFA流出の危機に直面しています。長年チームを支えてきた會澤も年齢的にフル稼働は到底厳しく、石原や持丸も一軍のレギュラーを張るには明確に物足りなさが残ります。さらに、期待の高卒組である清水や髙木も育成スピードが追いついておらず、二軍戦の運用すら頭数不足に頭を抱えるのが現実です。一軍で正捕手として修羅場をくぐり抜けてきた太田捕手が加われば、長年放置されてきた「捕手守備の脆弱さ」を解消し、破綻しかけている捕手陣の骨格を再建できます。 しかし、この補強論には球界で最も高くて分厚い壁が立ちはだかります。 それは、「広島東洋カープは球団創設以来、他球団から国内FA宣言した選手を一度も獲得したことがない」という現実です。これまでどれほどチームの弱点に合致する選手が市場に出ようとも、「生え抜き育成」と「身の丈経営」を都合よく掲げ、参戦すらほとんど見送ってきました。積極的なトレードも仕掛けず、他球団の戦力外獲得にも及び腰。ファンから「ひたすらやる気のないフロント」と揶揄されても仕方のない消極姿勢を貫いてきたのがカープです。だが、チームがBクラスに低迷し、主力の流出危機に怯える今、その頑なな姿勢は伝統でも美徳でもなく、単なる「思考停止」に過ぎません。補強ポイントにこれ以上なく合致し、地元に深いゆかりのある実力派捕手が手を挙げているにもかかわらず、過去の前例だけを理由に指をくわえて見送るのでは、ファンのフラストレーションは限界に達します。 先日、球団は元ヤクルト監督・GMの小川淳司氏を編成副本部長として電撃招聘しました。 もしあの一手が、身内のぬるま湯論理を打破して「勝つための合理的な補強」へ舵を切る合図なのだとすれば、この太田光獲りこそが新体制の覚悟を示す最高の試金石になるはずです。「どうせカープがFAに名乗りを上げるわけがない」というファンの諦めを、フロント自らの行動で打ち破ってくれることを強く願っています。
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